今日は、鈴木 祐さんの『YOUR TIME ユア・タイム: 4063の科学データで導き出した、あなたの人生を変える最後の時間術』です。
4.4 5つ星のうち4.4 737個の評価
目次
この本で分かること
この本で驚いたのが、万人に上手く機能する時間術はないということ。
本書では、その人のタイプやどんな種類のタスクをするかによって、時間術を使い分ける必要がある為、その方法を知ることができます。
読む目的
- 「時間が足りないという感覚を感じる理由を知るため」
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時間術には効果がない
冒頭でも触れましたが、世の中にたくさんある時間術には実はたいした効果が認められておらず、そもそもまともな検証もされていないみたいです。
現代社会では効率化が重要視され、タイパという言葉も流行っているくらいなのでのでこれには驚きました。
時間効率の追求が判断力と創造性を下げる
時間効率を求めすぎると大事なタスクを忘れたり、手軽なタスクだけで満足してしまったりするなど、逆効果になる場合もあります。
目の前のタスクばかりに意識が行き、長期的な目線でものごとを考えることが少なくなるなど、のデメリットもあります。
更に、脳が収束思考をしやすくなり、創造的なアイディアを思いつくときの拡散思考がなくなってしまい創造性が落ちるのです。
人生で大事なことを明確にする
人間はどうしても目の前の簡単なタスクに意識が向きがちで、重要だけど緊急性の低いタスクを後回しにしてしまいがちです。
アイゼンハワー・マトリクスの考え方ですね。
しかし、人生で大事なことが明確な人ほど、重要なタスクを見極めることができることが分かっています。
おそらく、仕事も大事だけど、会いたい人に会うとか旅行に行くとか、人間関係を充実させ大切な人との時間を増やすといったことが当てはまるのではないでしょうか。
時間の正体は確率の高い世界
時間は誰にでも感じることができるのに、五感のように特定の感覚器官を使って感じているわけではありません。
例えば、目の前にビルが解体された後の瓦礫の山があると、過去の記憶や経験から「瓦礫の山は元々建築物だったのだろう」と考え、更に「瓦礫が自然と積みあがることはないから今後も同じ状態が続く可能性が高い」と推定します。
このように、現在の情報を元に確率の高い世界を想像する際にできるのが、過去と未来であり、これが時間の正体なのです。
●未来=いまの状態の次に起きる確率が高い変化を、脳が「予期」したもの
●過去=いまの状態の前に発生した確率が高い変化を、脳が「想起」したもの
つまり、時間術はこの予期と想起の誤りを調整する為に用いるものなのです。
ToDoリストが向いている人
ToDoリストは予期が多すぎて、あれもこれもやらないと考えてしまう人に有効です。
リストを可視化することで、今はこのタスクをやればいいと集中することができます。
ちなみに私は予期が多いです。
タイムログが向いている人
タイムログが有効なのは、想起の誤りが大きかったり、想起が肯定すぎる人です。
これらの人は過去にギリギリまで終わらなかったタスクも今回は余裕だろうと考えてしまい、作業にかかる時間を甘くみてしまい、時間通りに終えることができなくなってしまいます。
これは人間が物事を楽観的に考えてしまうポリアンナ効果というバイアスが働くためで、気分が無駄に落ち込むのを防ぐなどの効果があり、必要な能力ではありますが、時間の想起に関しては見積を甘くしてしまう原因になるのです。
予期の現実感が濃い人ほど資産額が多い
予期が濃い人は10年以上の自分のことも現実的に考えることができます。
そのため、すっきりした頭で会議に臨む自分や、テスト本番の自分を想像して、早朝の会議の為に早めに寝たり、テスト勉強の為にゲームを我慢したりするという行動がとりやすくなるのです。
タイムボクシングが向いている人
タイムボクシングが有効なのは予期が薄い人です。
本来は2,3時間で作れる書類も1日後という締め切りだと将来の自分が遠くに感じられ、1日かけて書類をダラダラと作成してしまうということになりがちです。
10万文字の資料を80日で作成するなら、1日で250字を描く必要があり、250字なら30分で書けるなら毎日30分というボックスを1日のスケジュールに予め入れておくのです。
この際、睡眠や運動な遊びなどを先に組み込み、その間に執筆時間を入れるようにします。
でないとガス欠してしまいます。
タイムボクシングでしっかりと計画を可視化することで将来の自分が身近に感じられ、意志をコントロールできている感覚が生まれるのです。
私は予期が薄いので、長期的なタスクに使ってみようと思います。
更に、アンパッキングも予期の薄い人に有効で、先ほどの例で言うと、30分の執筆時間を更に細かいタスクにまで落とし込みます。
予期が濃すぎる
予期が濃すぎる人は目先の欲望を犠牲にしすぎてしまう為、人生を楽しめていない、時間がない。ゆっくり休めていないということになりがちです。
予期が濃い人には意図的に生産性を無視した活動を行うなどが有効です。
私は予期が濃いタイプでないのでここでは割愛しますが、詳しく知りたい方は是非本書を手に取ってみてください。
予期が多すぎる
予期が多すぎるタイプは将来のイメージがいくつも浮かび、複数のオプションが常に頭の中にある為、脳の認知リソースが分散し、目の前のタスクをこなすパワーが失われてしまいます。
予期が多すぎる人はエンゲージメント速度という「仕事を始めてからどれだけ早く認知を切り替えて集中できるか」にこだわることが有効です。
その場合は、今あるタスクを一旦洗い出し、今から大事なタスクに集中すると決めることで改善することが出来ます。
また、熟慮プランニングという何か問題が起きたときには、いったん立ち止まって対策をよく考えるというふうに事前に紙に書きだしておき、タスクのあいだは目に入る場所に置きます。
想起の誤りが大きい
想起の誤りが起きるのは、難しかったタスクは所要時間が長く感じられ、インパクトが強かった記憶ほど頻繁に思い出し、低い記憶は思い出しにくい状態で未来の計画を立てる傾向にあります。
想起の誤りが大きい人ほど、1週間程度のタイムログを取ることで改善されやすいです。
また、自分の周りの人でタスクをうまくこなしている人の行動を観察して、徹底的に真似してみると自己の想起から距離を置くことができ、適切な行動を取ることができます。
尊敬する人が使っているテクニックだとやる気が出て、心理的抵抗もかなり低くなります。
想起が肯定的すぎる人
想起が肯定的すぎる人の有効な策の一つは誘惑に負けた体験を記録していくという誘惑日記をつける方法です。
そうすることですこしずつ自分の想起のずれが修正されていきます。
逆に想起が否定的すぎる人は日々の小さな成功を記録していくことで、否定的な想起が少しずつ修正されていきます。
また他人にアドバイスをしたり、アドバイスをするとしたらどんな言葉をかけるだろうと想像することでポジティブば感情を増やすことができます、
テクノロジーは人間から忍耐力を奪った
テクノロジーの技術が発展し、生産性や作業効率は劇的に上がったものの、人間の認知の耐性、つまり曖昧なまま放置して進める能力が下がってしまった。
小説は認知の耐性を回復してくれる。良質な小説ほど読み手の解釈に委ねたまま物語が進んだり、時には悪者の立場にまって考えることもあるためである。
また、効率や生産性から離れるためには他人のために時間を使うことが有効です。
他人のために時間を使うことで、脳が今日はいつもより余裕があると思い、生産性から意識を引き離すことが出来るのです。
時間が一直線に進むというのも思い込み
先進国に生きる私たちには当たり前の感覚で、時間は一直線に進んでおり、一度過ぎた時間は戻ってこないと思っていますが、実は時間は一直線であるとは違う感覚で生きている民族もいるんです。
これには僕も驚きました。
サン人というカラハリ砂漠に住む人間は、世界は一定周期で繰り返すものという感覚を持っている。
だから、友人に子供が生まれても、「友人に子供が生まれるという現象がまた起きた」という表現となり、過去に起きたことがまた起こるのは当たり前だと考えるわけです。
また、バリ島の先住民であるバリアガはウク歴と呼ばれるカレンダーを使い、10種類以上のサイクルが複雑に絡み合ったパターンで月日を表現するのです。
ちょっと理解しずらい感覚ですよね。サン人の表現は理解できますが、ウク歴の考え方は難しく感じます。
サン人は未来に起こることは過去に起こったことの再現であると考える為、狩りに失敗するかもしれないとは考えず、過去に獲物を捕らえられたから今度も当たり前に狩ることができるだろうと考えます。
そもそも、サン人は時間の流れに沿って予定は組まず、AをやったらB、BをやったらCというイベントを基準で考えるため、時間を有効活用しようという考えすらないのです。
この辺は理解できるような気がしますね。
人間の時間感覚の特徴
人間のタスク中とタスク後の時間感覚には以下の特徴があるようです。
①タスク中:楽しい体験の最中は時間が短くなり、つまらない体験の最中は長くなる。
②タスク後:楽しい体験のあとは時間が長くなり、つまらない体験のあとは時間が短くなる
なぜこのように感じるのかというと、印象的な想起の回数をもとに過去の時間の量を見積もるからで、楽しい旅行の後はあれもやったし、これもやったなとたくさんの思い出があり、充実した時間を過ごせたなと感じ、逆にルーティンワークなどのあとは、特に印象的な想起もないので、たいした時間は使っていないなと感じ、時間が早く過ぎたように感じるのです。
印象的な想起を増やしたいものですね。
そして、面白いことに絵画を数時間も見続けるという一見退屈に思える行動は、途中から目の前の絵の細かい描写にどんどん気が付けるようになり、つまりあらゆる些細なことが印象的に感じられるようになり、いろいろなことを感じ充実した時間だったなと感じられるようになるのです。
メンテンナンスのように意図的に、情報の処理速度を落とすことで、その後の時間感覚を改善することができるようです。
これは自分も実践してみようと思います。
あえて、イベントタイム方式で行動することを意識してみるのも有効です。
特に私のように多くの一般的な会社員は仕事の日はどうしても時間を基準に行動しなければなりません。(クロックタイムといいます。)
休日には、朝ごはんを食べたら、掃除をする、掃除が終わったら読書をして、十分に読書をして満足したら次の作業に移るというふうに時間を気にせず過ごす時間を増やしましょう。
イベントタイムで過ごしたほうが、現状の自分に満足しやすく創造的なアイディアも思いつきやすいという研究もあるそうです。
時間を気にせず過ごすことが気持ちよいことは皆さんも経験したことがあるのではないしょうか。
だからといって時間を無視つづければ現代社会ではうまく機能しないことのほうが多いことはご存じ通りだと思います。
時間を気にするときとあえて無視するときの使い分けが非常に重要です。
脳を満足させる
そもそも人間は完璧な答えを出せるように作られていません。
完璧な判断はするにはあまりにも複雑で膨大な情報をそれぞれ重みづけして的確に判断しなければならない為、脳が追い付きません。
逆に人間の脳はそこそこ答えを出すことに非常に優れているように作られているので、完璧を目指すこと自体が誤ったアプローチです。
まとめ
時間術は適材適所に使い分けるものであり、そこそこの成果を出すという意識で臨むべきですね。
本書の時間術も完璧に使い分けるぞという姿勢よりも、ひとつだけ試してみるくらいで考えることが重要だと言えます。
巻末には時間術リストも付いているので、たまに見返したりして気軽に実践していきたいと思います!